AUTUMN BRIGHTNESS TOUR@熊本DRUM Be-9

昨日のMCバトル、MCたちの緊張が伝わってきた。
そういえばこんな試合前の緊張を感じていたのは、
僕の場合、中学の時にやっていた卓球の試合が最後で、
あの緊張感は結構好きなのに、最近はそういうのないなあ。


と、思っていた矢先、吐きそうになるほどの緊張を体感。
ある場所にて、A氏には出会わずB氏と接触するミッション、
A氏に遭遇してしまったらゲームオーバーなもんだから、
ほぼメタルギアソリッド状態で、実に緊張が耐えなかった。
ミッションコンプリート時には王宮潜入後のノヴさんみたいに…。


しかしここで枯れ果てるわけにはいかない。
THA BLUE HERBの全国ツアー、AUTUMN BRIGHTNESS TOUR。
ミッション完了と共に、会場であるDrum Be-9へと急いだ。


なんというかなあ、もう語ることはないんだよなあ。
語るとしても、あの110分のショーケースでBOSSが語った言葉の、
何百倍もの言葉を用意しなきゃならない。そんなのは不可能だ。


110分、一瞬たりとも目を離せなかった。頭を揺らしてる暇も無かった。
目はBOSSの動きだけを捉え、耳はDJ DYEの奏でる音を捉え、
脳はBOSSの語る言葉を只管に追っかけてはその意味を吸収していた。
今まで色んなアーティストたちのライブを見てきたけど、
今日のTHA BLUE HERBのライブが一番じゃ足りないほど一番。
“ライブは一期一会”を今日ほど納得し納得出来なかった日は無い。
人間が本当に集中できる時間って20分程度だって言われてるけど、
僕は昨晩のMCバトルの件で寝不足であることも全くものともせず、
BOSSが語り始めてから語り終わるまで、100%の集中力を発揮していた。
このTBHはライブでしか表現できない、と同時にこのライブは今日一度、
今日一度だけ、一年に一度あるかないか、TBHの全力を知るための、
その大切なピースとはこうして滅多に出会うことが出来ないもの。


ここから少しだけ、のんべんだらりーと感想をつらねます。
まだライブを見てなくて、これからこのツアーを見る予定の人は、
ネタバレもあるかもしれないのでこの部分は見ないほうが楽しめます。
BOSSが「野良犬ゥ!!」と叫んだときは漏らしそうになったなあ。
“俺を誰だと思ってる”の声ネタがかかった時もびっくりしたなあ。
ビギーのJuicyの上で「あの夜だけは⇒この夜だけは」綺麗な空間だった。
ライブ終了後、「アンコールは無い、終わらせるためにここにいる」。


ここまで「人生」とその「生き様」を語れるMCが他にいようか。
やっぱりBOSSは日本の、ヒップホップ界の、ボスだ。
MCとして言うと、良い刺激をもらったとかそういうレベルじゃない。
どれだけ上辺だけのラップミュージックが世に氾濫しているのか、
そしてどれだけ自分が魂を燃焼し尽くせていない音楽をやっているのか、
同時に絶望に近い激励と説教も貰った。マイク一本、その重さ。
BOSSはMCとして憧れはしても、目指すことは出来ない存在。
それは誰にでもわかってること。TBHはインディペンデント音楽の鑑だ。


前にM.I.A.が、「音楽は産業廃棄物で良い、こんなに溢れているんだから」
みたいなことを言っていて、なるほど、自分の作った曲に飽きられたら、
新しい曲を作ってサイクルさせれば良いだけと納得したことがあったけども、
やっぱりこれは違う。絶対に違う。埋もれちゃ、流されて消えていっちゃ
いけない音楽を、TBHが魂を削りながら自身の分身として産み落としてる。
これは何年、数十年後、日本語ラップという文化がある限りは、いや、
日本語ラップという文化が分解され形を大きく変え別の音楽と変化&同化
してしまっても、音楽がある限りは、TBHは聴かれ続けなきゃならない。


ライブ終了後、BOSSと接触したのだけれども、
余りにも恐れ多く、用意していたいくらかの言葉のうち、
たった一つ、「ありがとうございました」しか出なかった。
さっきまであの壮絶なライブを支配していたTBHのBOSSが、
目の前にいる。怖くて仕方が無い、体中の震えが止まらない。
DJ DYEさんはいい人オーラが話し方からも出ていて少し安心。
本当に、大したことは何も、何も言えなかった。


BOSSを語る言葉ってどうしても無様になっちゃうなあ。
BOSS以上の言葉の使い手じゃなければ無理な話だからね。


THA BLUE HERB、AUTUMN BRIGHTNESS TOUR、最高でした。