エピローグ

今日で古典の授業は最後…。学校に行く唯一の楽しみが消えました。
まあ、学校自体が無いも同然なんですけどね。あとはイベント系だけ。




放課後、証明写真を焼き増しするために家の近所にあるキタムラに行きました。
すると、なんとそこには僕の好きな古典の先生がいたのです!…男の人と一緒に。
話し掛けることが出来なかった。最高の喜びから、絶望への転落。
その男の人が先生のお父さんであることを願いましたが、
容姿は中年のオッサンだけど、親ほどの年齢ではない様子。
先生の年齢を考えるとお父さんは60歳以上だと思われますから。
やっぱり…旦那さんなのかなぁ…。
今までも先生に旦那さんがいることは知っていたけれど、
その人を見たことも無かったので漠然としか感じていませんでした。
しかしいざ現実を目の当たりにすると実感しちゃって、悲しくて、辛くて…。


先生が商品を手にし、レジまで歩いてきました。僕の目の前を素通りして。
僕は制服姿だったので同じ学校の生徒だということはわかったはずです。
しかし、こちらに目を向ける様子も無く素通り。
それでも僕は先生をキレイだと思っていました。
僕は一体、どんな悪質な魔法に侵されてしまったのでしょうか?


先生と仲良くするための努力もしてないし、挑戦だってしてない。
勝負さえしてないはずなのに、この敗北感は?この臍を噛む思いは?


こんなやりきれない気持ちがあるから僕は現実に背を向けてきたんだ。
なのに教師である1人の女性に惑わされ、現実の魅力に囚われてしまった。
その結果は言うまでも無く、斬首といったところでしょうか。
ところがそれも許されず、僕は無期懲役を背負う羽目になったのです。


涙が溢れてくるのですが、僕はそれを止める術を知りません。
その滴が畳に零れ落ちるのですが、僕にはそれを拭う気力がありません。
ただ触れたかった。それだけなのに、僕を撫でる風はこんなにも冷たいのです。


雨空を見上げる女性の横顔は美しい。美しいものにはトゲがあり蔓がある。
鮮やかな花びらに魅せられたが最後、縛られ下手に動いてもトゲが刺さるだけ。


僕はもう眠る事にします。少し、いえ大分疲れました。
きっと目が覚めすぎていたのでしょうね。いろんなものが見えました。
子供の世界は鮮やかな黄色でしたし、大人の世界は真っ黒でした。
未来を暗示する色はスカイブルー。…では、おやすみなさいませ。