また、ギャングスタなカスタマーが来たもんだ。
「お忙しいところすみません」と上品そうな老婆。
老婆「ペーパーは置いてありませんか?」
僕「…紙……ですか?」
老婆「ペーパーですよ、ペーパー」
僕「えっと、どういった紙でしょうか?」
老婆「だから、ペーパーって言ってるでしょうが」
僕「え、えと、どういったペーパーでしょうか…?」
老婆「(知らないの?といった風に)トイレを磨くのよ」


まったくもって何のことだかわからない。
とりあえず、トイレを拭くトイレクリーナーのところにご案内。
老婆「違うでしょう、これはクリーナー、私が欲しいのはペーパー」
僕「…もしかしてサンドペーパーでしょうか?」
そんな僕に対し、呆れたように老婆はこう言ったのだ。
老婆「もういい、古い人(古参の事?)を呼んできて頂戴」
ため息交じりで、そんなことも知らないの?といった態度である。
これは間違いなく説明が悪い。同じ説明を他のスタッフに話しても、
理解できないだろう。何せしきりにペーパーと言うだけなのだから。


僕が思うにサンドペーパーの事だろうと、
「サンドペーパーのコーナーにご案内します」と言うと、
老婆はこいつだめだ、と小馬鹿にしたような態度で首を横に振り、
それでも黙ってとぼとぼとろとろと僕の後に付いてきた。
いざ、サンドペーパーのコーナーに連れて行くと、
老婆は「そう、これなのよ」と、顔を輝かせた。
どうやらサンドペーパーで合っていたらしい。
この老婆は恐らく、僕のことを無知な若者だと思っていただろう。
さて、無知はいい加減どっちかな…?
サンドペーパーくらい通じてくれ、
というか買うものの名前くらい覚えておいてくれ。
恐らく、さっき僕を愚弄したことさえも覚えていないだろう。
そして老婆の最後の一言。


「これで仏壇の金属の鉢(鈴)を磨くのよ」


…トイレは何処に行った?