タケヒト君と甘い誘惑

午前零時過ぎ。
誰もいない、だだっ広い閉鎖された駐車場。
僕はただ、雨に打たれて、ずぶ濡れになって立っていた。


傘は持っていたけれども、
そこまでの道のり、傘を差すことさえ忘れて、
夢中で自転車をこいでいたからだ。


既に、頬を伝う物が雨か涙かはわからない。
自転車に寄りかかり、嗚咽を漏らしていた。


冷静になった今となっては、このことは、
中二病臭くてすっごく恥ずかしいんだけど、


それだけ好きな人がいたんだ。
いや、それだけ好きな人がいるんだ。
そしてまだ好きなんだ。
愛の文を綴る方がどうかしてる。
言葉どころか、他に例えることの出来ない愛おしさ。


好きになることがこんなにつらいのなら、
もう誰も好きになんてなりたくない。
死ぬほど辛いことなんてそう無いなんて思ってたけれども、
こんなにも、


ねぇ、いけないことかい?まだ貴女を好きでいること。
ねぇ、いけないことかい?まだ貴女の影に抱かれている。
ねぇ、言えなかった本音がずっとここに滞ってるんだよ。
ねぇ、泣き足りないなんて言わないけれど僕は弱いままさ。
でも、ここでやっと何時でも死ねる準備が出来たと思える。
僕のこの世界の未練なんて、貴女くらいしかないのだから。
リセットボタンがあったら押すかって?押すね、間違いなく。
でも二度とはプレイしないよ。結果は同じなんじゃない?
だって僕が頑張っても、相手の気持ちがこっちを向いてなきゃ、
全て無意味なんだ。諦めが大事だということも、知っておくと良い。
それは振り向かせる努力が足りないって?
ふぅん、じゃあ僕を振り向かせてみなよ。
君が何万回挑戦したって、どんな手を使ったって、
僕はあの娘だけを見ている。
そういうことなんだよ。


貴女が好きだから僕は、貴女が好きだから僕は、


今、生きてる。