顔無し仔猫と秋の夜・その4

カイザーフェニックスと、3度目の夜を越した。
カイザーフェニックスがうちにやってきてからは、
寝不足の日々が続いている。なにしろカイザーフェニックスが
熟睡している布団に僕が入り込むと、カイザーフェニックスは、
途端に僕の身体をさすったり、抱きしめて密着しようとしたり、
接吻してきたりするようになる。それがあまりにも激しいので、
うまく眠れないのだ。一度、突き放してから仰向けに寝ても、
またカイザーフェニックスはぴったりとくっついてくる。
流石にこれは行き過ぎではないかと、今朝話したのだけれど、
カイザーフェニックスは顔を赤らめて「覚えてない」と言う。
…なるほど、あれは寝ぼけていたのか。よく考えてみると、
普段の動向からしてもそんなことをするカイザーフェニックスではない。


今日は、3日連続で大学を休むわけにもいかないので大学へ行くことに。
このことを話すと、カイザーフェニックスは涙を流し抱きついてきた。
「貴方が帰ってくるまで、ここにいていい?帰ってきたら、私も帰るから」
カイザーフェニックスの口から弱弱しく漏れたのは、別れの言葉だった。
帰りたくないけど帰らなきゃならない。誰にでも事情はあるもんだ。


講義が終わり家に帰ると、カイザーフェニックスはアニメ鬼太郎を見ていた。
そういえば部屋が綺麗になっている。僕が大学にいる間、片付けてくれたのか。
ほっともっとで買ってきた特弁当を2人で食べて、荷物をまとめてお別れ。
信号が青に変わると、「じゃあ、またいつか」と、それが最後の言葉。


今日の夜からはベッドは広い、広々と使える。
昨晩のようにベッドから落ちかけることもないだろう。
でも、寒い。あんなに温かかった布団が、今は冷たく感じる。
カイザーフェニックスは、僕に寂しさを教えてくれた。
カイザーフェニックスは、そのために僕のところにきたのだろう。
この数日間の出来事は夢か幻か、でも確かに、
カイザーフェニックスに貸していた僕の服はなくなっていた。
僕がB系の格好でブリンブリンかましてた時代のビッグサイズな服、
それをミニモニクラスの身長であるカイザーフェニックスに着せていた。
服のすそが既にスカートみたいになっているので、ズボン要らず&セクシー。
良いものを見れた、少しだけペンを走らせると、僕はまた足踏みを始めた。



カイザーフェニックスと最後に食べた食事、特弁当330円。
セール期間のせいか、から揚げが余りにも貧相すぎで哀しい気持ち。