僕が音楽をやる理由

懐かしい、旧友が私を訪ねてきました。身長も伸び、声も一段と低くなってました。
やはりよいものですね。旧い友人というものは。あの空気の感覚が好きです。
ゆったり流れる時間の中で、鼻で笑って流してた思い出も今は大事な一つの記憶。
2つとしてない、僕らの記憶。そっと触れ合うだけで、セピア色した映像が瞼の裏に映る。
ああ、どこかで見た景色。一人じゃ思い出せなかった喜びや痛み。徐々に広がる額。
そして次第に時代は移ろい「あの頃に戻りたいね」と昔話のうるさい老人になっていく。
時間の流れがくれたモノの中にはロクな感情は無かった。昔は何もかもが新鮮に感じられた。
「昔」を取り戻すために僕は音楽をやっている。取り戻す、といっても一時的に過ぎないが。
「ああ、こんなこともあったな」という空間の中に身を委ねる、なんともいえない心地よさ。
聴くだけで浮かび上がる過去の出来事。幻想でもいい、僕はそれを追い求めていたんだ。