顔無し仔猫と秋の夜・その2

窮屈なベッドで目が覚めた。誰かが抱きついている。
ああ、昨晩拾ってきた仔猫、カイザーフェニックスだ。
じゃれ付いて離れる気配が全く無い、これじゃ大学も遅刻だ。
こうなったら…、結局午後一時過ぎまでじゃれあっていた。
カイザーフェニックスが最後に何かを食べてから、
24時間が経とうとしていた。これは不味いだろうと、
近場のマックに足を運んだ。所要時間5分未満。
カイザーフェニックスは、余り食欲がないようだったけれども、
ビッグマックとポテトM、そしてソウケンビチャMを平らげた。
そのあと、カイザーフェニックスに後ろから強く抱きしめられ、
口からベーコンが出そうになった覚えがある。というのも、
僕はベーコンレタスバーガーを食べていたのだった。


カイザーフェニックスは、着替えの下着が欲しいと言い始めた。
僕のものを貸すと提案するも、却下。流石に下着の共有は無理か。
近場のディスカウントストアへ一緒に向かい、ショッピング。
下着コーナーまで一緒について行くも「来ないで!!」と、
怒られてしまった。まったく、カイザーフェニックス心はわからない。
こうなったら今夜は酒だ!とアルコール&スコーン、そしてチョコ菓子。
んで、カイザーフェニックスの要望で野菜生活100を買わされた。
まあいいんだけどさ、ジュースの一本や二本くらい。
カイザーフェニックスのお財布事情を考えるとなおさらそう思えてくる。
カイザーフェニックスは下着の他に生活用品をいくつか買っていた。
帰るところは、あるのだろうか。日の落ちるころ、一緒に家まで帰った。


音楽鑑賞だとかCDレビューだとかトラック制作だとか、
したいことがたくさんたまっていたのだけれども、
布団から覗くカイザーフェニックスの瞳に見られていると、
構ってあげないわけにもいかず、ついついじゃれ付いてしまう。
結局寝るまでじゃれ合い、そのまま寝てしまった。


カイザーフェニックスは随分と僕になついてしまったようだ。
兎に角ことあるごとに抱きついては、僕の肌を求めてくる。
何事も無くても、突然両手を大きく開き、ハグの合図をする。
それだけいままでが、寂しかったのか、今が嬉しいのか。
僕はカイザーフェニックスの、一体何になれるのだろう?